澤田則宏先生マイクロエンドセミナー
こんにちは,syuです.
先日,エンド専門医の澤田則宏先生のマイクロエンドセミナーを受講してきましたので,自身への備忘録も兼ねて記しておきたいと思います.
マイクロエンドとは,手術用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いて行う根管治療のことです.
顕微鏡を用いることで約4〜20倍の倍率で歯を観察することができ,肉眼では見つけることができず治療不可能だったものも治療できるようになるのです.
日本では歯科医院におけるマイクロスコープの普及率は5%程度とも言われているようで,その中で実際に活用されているのはさらに少ない(置いているだけという医院も多いんです)ことを考えると,マイクロスコープを使いこなして治療されている先生はごくわずかというのが現状です.
ですが,アメリカの専門医は1998年よりマイクロスコープの教育および使用が米国歯科医師会により義務化されており,つまりそれ以降に教育を受けた専門医は100%マイクロスコープを使っています.また全体でも現在99%の専門医がマイクロスコープを使用しているそうです.
そのくらい,根管治療にマイクロスコープは必要不可欠なツールなのです.
で,今回はそのマイクロスコープを用いた根管治療に関する講義実習のセミナーに参加してきた訳です.
以下,内容の備忘録になりますので,歯科関係者以外の方には面白くもなんともないかとおもわれます(汗).
・マイクロスコープの光源はハロゲン(30,000〜100,000lux/3,000〜5,000K),キセノン(200,000lux/5,000〜6,000K),LED(50,000〜100,000lux/5,000〜6,600K)がある.キセノン,LEDはとても明るいが,長時間直接目に触れるとそれぞれ紫外性眼炎,青色光網膜障害を引き起こす可能性があるので注意が必要.
・解像度に影響するのはガラスの材質とレンズの設計
(どおりでレンズに定評のあるLeicaやZeissは綺麗に見えるわけだ)
・上顎第一大臼歯の近心頬側根の約6割は2根管性(Cleghorn et al, JOE, 2006)
・根管形成のファーストステップとして最重要なのはコロナルフレア.
anti-curvature filing.
・ラバーダムは必須.
・ラバーダムを使用することで有意に再治療の予後が向上した(Van Nieuwenhuysen et al, Int Endo J, 1994)
・破折器具除去はダイヤモンドコーティングなしの超音波チップで.湾曲の内側へ.
プラットフォームステージングテクニック.
・超音波を用いて重篤な熱傷の報告あり.冷却に注意.
・破折器具の存在が成功率に影響を与えないという報告も(Spili P et al. JOE, 2005).
・根未完成歯で失活の場合,Revascularizationの選択肢.
・ニッケルチタンファイルは第6世代ともいうべき時代へ.
澤田先生の最近のお気に入りはHyFlex.プレカーブ付与可能.
・根管洗浄は6%ヒポクロ.根充前のみ17%EDTA.ヒポクロアクシデントに注意.
・再治療全体の成功率は69.03%.根管形態が維持されていれば86.8%.根管形態が破壊されていれば47%.有意差あり.(Gorni and Gagliani, JOE, 2004)
・ネゴシエーションのコツ.
・トライオートZX2とスーパーファイルを用いたPatencyおよびGlide path.
・なぜ根管があかないのか?
石灰変性
湾曲にファイルが追従しない→器具の限界?術者の限界?
・開かない根管の見分け方→NCテスト
・根管充填はバーティカルでもラテラルでもOK.
ただしラテラルでは.07以上のテーパーが必要
・接着性根管充填材 メタシールソフトの有効性
・エンドの質もレストレーションの質も重要.
・穿孔封鎖は迅速に,無菌的に,緊密に.
Internal Matrix Technique.MTAの登場により必ずしも必要なくなった.
・世界中の専門医がもっとも難症例だと思うのはレッジの形成されたもの.
・CBCT撮影は必要最小限で.ポストや根充材除去後が良い.予後の判定にCTは不要.
CTで映る透過像をすべて拾うとオーバートリートメントの可能性も.
などなど,二日間で盛りだくさんの内容でした.
ずっと気になっていたトライオートZX2とスーパーファイルを用いた穿通も抜去歯を用いて体験できたのは非常にうれしかったです.
石灰変性しているような根管をあけるものではないですが,細い根管やレッジができているものなどで手指によるネゴシエーションでいままで相当しんどかったものも,これを使えばかなり楽になるものも多そう...
正直思っていたより良かったです.自分が選べる立場ならこれ買うかも...
もし検討中の先生がいれば参考に.
以上,今回は歯科関係者以外には全く関係ないお話でしたが,たまにはこういうのも...
それでは,また.
歯内療法レボリューション CBCTとマイクロスコープの臨床応用
- 作者: 北村和夫,新井嘉則,辻本真規,辻本恭久,三橋純,寺内吉継,吉岡隆知,澤田則宏,木ノ本喜史,牛窪敏博,金子友厚,興地隆史,田中利典,吉岡俊彦,長尾大輔,三橋晃,加藤広之,佐藤暢也,月星太介
- 出版社/メーカー: 医歯薬出版
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